メキシコと日本で進む「街の高級化」—誰のための再開発?
観光や移住が活発になるほど街は活気づきます。しかし同時に、家賃の上昇や日用品店の減少など、生活者の視点では困りごとも増えます。日本では東京の下町や京都などで、ジェントリフィケーション(街の高級化)が話題です。メキシコでも、メキシコシティ(ローマ/コンデサ周辺)や観光都市(例:オアハカ、トゥルム、サン・ミゲル・デ・アジェンデ)で、問題になっています。
ジェントリフィケーションとは?
- 定義:低家賃で暮らしていた住民や店舗が、再開発・観光・短期賃貸化・高所得層流入などを背景に、家賃上昇や用途変更で押し出される現象。
- きっかけの例:民泊や短期賃貸の拡大、カフェ/ギャラリーの増加、都心回帰、インフラ整備、海外・外資マネーの流入、デジタルノマド。
- 影響:住まいの負担増、日用品店の減少、生活の観光化、コミュニティの弱体化など。
メキシコでいま何が起きているか
メキシコシティ
ローマ/コンデサや中心部の再評価が進み、短期賃貸やコリビング、リノベ物件が増加。飲食・クリエイティブ産業が活発化する一方、長年の住民の家賃負担が重くなっています。
観光都市
世界的な人気上昇により、歴史地区のホテル化/商業化が進展。季節要因で相場が跳ねやすく、地域の生活機能が圧迫される場面もあります。
オアハカ、トゥルム、プラヤ・デル・カルメン、サン・ミゲル・デ・アジェンデ、メリダなど
産業都市
モンテレイ、ケレタロ等の産業都市では、投資・雇用拡大で新築供給が追いつかず賃料が上昇。短期駐在層やハイエンド需要が局所的に相場を押し上げるケースも見られます。
補足:“観光型”と“産業成長型”の二つの圧力があり、どちらも住居費上昇につながりやすい構造があります。
日本では
東京の下町
清澄白河/蔵前/浅草/谷根千など、東京の下町と言われるエリアでは、カフェやギャラリー、リノベ物件の増加で人気が上昇しています。“住める賃料”だった地域が“憧れ価格”へと変化し、古い商店の減少も指摘されています。
渋谷周辺や湾岸
再開発・オフィス需要・タワーマンション供給が重なり、地価・賃料が上振れ。個人商店が入れ替わる動きも加速しています。
京都
歴史的景観と観光人気の高さから、町家の宿泊施設化や民泊の影響が議論に。生活の場と観光地の境界が曖昧になりがちです。
地方都市(福岡、札幌、名古屋など)
創業支援やクリエイティブ地区の形成が進む一方で、元住民・小規模店舗の居場所が狭まる懸念もあります。
共通点と相違点(比較表)
観点 | メキシコ | 日本 |
---|---|---|
主な圧力 | 観光+産業成長+海外移住(デジタルノマド含む) | 観光+都心回帰+再開発(人口減だが局所的に高騰) |
住宅市場 | 新築供給が追いつかず上昇しやすい都市あり | 空き家活用もあるが、人気エリアは高騰 |
商店 | 観光・外食が伸び、日用品店が減るケース | チェーン化・観光化で個人店が退く場合 |
規制 | 短期賃貸の規制や税制は都市で差 | 民泊・用途地域・景観条例など比較的整備 |
体感 | 季節やイベントで相場が振れやすい観光地が多い | 年単位でじわりと変化、再開発で局所的に急変 |
旅行者・移住者ができること
- 規則を守る:民泊のハウスルール、騒音・ゴミ出しなど地域ルールを最優先。
- ローカルにお金を落とす:スーパーマーケット、八百屋、地元のコーヒー焙煎店など日常店を選ぶ。
- 長期の視点:短期賃貸だけでなく、長期賃貸や共助の仕組みに参加(自治会、清掃、寄付など)。
- 言語と礼儀:簡単な現地語(メキシコならスペイン語、日本なら日本語)の挨拶やお願い表現を覚え、摩擦を未然に防ぐ。
どれも、本当に大切なこと。言語面などすぐには難しい面もあるけれど、ルールを守ることなどは基本中の基本。郷に入っては郷に従えですね。
よくある誤解と、議論を進めるための視点
- 誤解1:「観光客が悪い」 — 行為の問題。ルール設計とマナーの徹底が鍵。
- 誤解2:「新しい店は全部ダメ」 — 生活密着の店も増やす政策設計で共存可能。
視点:“観光 vs 生活”ではなく、“観光 × 生活の最適化”へ。時間帯・エリア分けやイベント設計で住み分けを図る。
まとめ——「観光と暮らし」を両立させるために
街が注目されること自体はチャンスです。しかし、その恩恵が地元にも還元され、長く暮らせる仕組みがなければ、街の魅力はやがて痩せてしまいます。旅行者・移住者・事業者・自治体が、それぞれの立場で一歩ずつ。私たち一人ひとりの選択が、街の将来を静かに形づくります。
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