日本のハンコ文化とメキシコのサイン文化に触れて思ったこと
日本で暮らしていた頃、ハンコを押すのは日常の一部でした。子供の頃は連絡帳に親の印鑑が必要だったり、大人になってからは宅配便の受け取り、社内の承認、銀行の手続き…どれもハンコがあればスムーズに進みます。
「印鑑を押した=正式に承認した」という安心感は、日本らしい習慣のひとつだと思います。
変わりつつある日本のハンコ文化
とはいえ、ここ20年ほどで日本のハンコ文化も少しずつ変わってきていますよね。
会社によっては「社内承認はサインやシステムで完結」というケースも増えていますし、
日常生活でも宅配便はサインで済むことが多くなりました。
私の会社ではなかったですが、昔はあえてハンコを斜めに押すなんていう圧というか社内のマナーみたいなものがあった話も聞いています。
電子印影という過渡期の存在
最近は、紙のハンコに代わって電子印影を使う会社も増えているのではないでしょうか。
PDFやExcelに押すデジタルのハンコで、社内の回覧や承認に使われ、法律的な効力というよりは、「承認しましたよ」という心理的な安心感のためのものに見えます。
メキシコに来て数年しかたっていませんが、この間久しぶりに電子印影を見てちょっと変な気持ちになってしまいました。変な気持ちというか、疑問というか・・・複製は簡単だし、これは意味あるの?って考えてしまいました。
思い返してみたら以前の職場では、承認関係はシステム上で完結しているのにも関わらず、社長が確認できるようにというだけのために、エクセルのドキュメントに電子印鑑を使っていました。
承認はシステム上で完結しているのに、見た目としてハンコを残したくなるのは、やはり日本ならではの丁寧さや形式美なのだと思います。
メキシコのサイン文化に触れて
一方、私が暮らすメキシコでは、ハンコ文化はほとんどありません。「支払い済み」「受け取り済み」のようなスタンプを書類に押して使っている人をたまに見かけますが、名前のハンコというものはそもそも存在しないです。
銀行や契約書、社内書類もすべてサイン(署名)で完結します。
そして驚いたのは、書類の訂正方法です。
- 書類は訂正せずに新しい紙に書き直すのが原則
- 修正液や二重線は基本的にNG
- 「清書された完璧な紙」が信用される
これ、本当に面倒です。
日本なら訂正印を押して済ませる場面でも、メキシコでは「書き直してください」と言われます。
最初は少し戸惑いましたが、これも不正防止と信用重視の文化なんですね。
どうやらこれはサイン文化では当たり前のようですが(ChatGPTに聞きました)、このルールを知らなかった頃、訂正した用紙を見た同僚に、呆れたことがあります。「そんなことも知らないの?」という驚きからの呆れ顔でした。
どちらの文化も面白い
暮らしてみて思うのは、どちらの文化にも一長一短があるということです。
日本の訂正印や電子印影は、効率的で履歴が残る安心感があります。
メキシコのサイン文化は、清書を重んじてシンプルに「完璧な紙」で信用を得ます。
また1つ、小さなことですが違いを発見できました。どちらの良さも再発見できるのが面白いところです。
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